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ちびねこグルのぼうけん

2003年6月25日 初版発行
作者:アン・ピートリ
訳者:古川博巳、黒沢優子
画家:大社玲子
発行所:株式会社福音館書店
定価:1500円(税別)
ISBN4-8340-0625-5 C8097

グルは、6匹兄弟の末っ子。マンクス猫のお父さんに似て、兄弟でたった一匹、尻尾が短い。お母さんは、その短い尻尾が一番かっこうがいいのだと教えてくれた。グルは、嬉しいときに、それは大きな音でグルルルルと喉を鳴らす。それが、名前の由来だ。グルは、ある日、ドラッグストアのジェームズさんの家にもらわれていくことになった。お母さんは、人間は、グルの話すことをわかってくれないと云う。だからちょっと淋しいかもしれないと。
たしかに、グルの話しは人間には通じなかった。その上、みんなグルの短い尻尾をばかにする。短気のグルは、『ちっくしょー』を連発。ある日、ドラッグストアのお客さんをひっかいてしまった。ジェームズおばさんは、グルをもとの納屋に返すという。さあ、どうしよう。今まで返された猫はいないと、お母さんは言っていたのに。何とかしなくては。

この話しは、グルが唯一の問題点、『短気』を必死で克服する様子を描いていく。その間に、何とグルの話しのわかる人間二人に出会うのだ。一人は、子供、一人はお年寄り。グルの話しのわかる人間とわからない人間の違いは何なのだろう。グルは考えていく。

本書は、1949年にアン・ピートリが姪に読ませようと執筆したもの。アン・ピートリの家は三代にわたってドラッグストアを経営していた。そんな身近な設定から、素直に描かれた物語だ。グルの『ちっくしょー』は何とも愛らしいが、その『ちっくしょー』を飲み込む術を必死に身に付けていく様は、ますます愛らしい。私たちも、グルに見習い、『ちっくしょー』を飲み込む練習をしなくては。そして何より、グルの言葉がわかる人間にならなくては。

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