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2004年11月10日 初版第1刷発行 |
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夏のある日、いつものように散歩に出た野良猫のくろべえは、かすかな声を耳にします。あたりを探すと、一本の棒きれがすすり泣いていました。この棒きれは、自分には大事な役目があったのに、それが何だったのか、すっかり忘れてしまったのだと言うのです。くろべえは、見過ごすことができず、その棒の役目を一緒に探すことにしました。役目探しの旅は、危険と隣り合わせ。それでも、くろべえは棒をくわえて旅を続けます。そして、やっと思い出した、棒の役目は……。 思い掛けないストーリーの展開に、胸が鷲掴みにされる思いだ。途中、くろべえも、自分の役目は一体何なのかと思い巡らす。そして本書を読む私たちもまた、自分の役目を考える。本書は、くろべえと棒の間に通う信頼や友情の物語であると同時に、自らの役目という大きな命題を問う、ずっしり重い一冊でもある。 ずっと黒一色で描かれていくイラストの、最後の2ページだけに使われた色は、深く心に刻まれる。 |