|
ぼくとアナン 2009年5月15日 第1刷発行 |
|
アマゾンではなく、書店の店頭で見つけ、買い求めた本には、期待が一回り大きく膨らむ。どれどれ、と1ページ目を読み始めて、その甘い語調にあれれ、と一瞬後悔が走った。『ぼく』は捨てられた仔猫で、物語はどうやらこの猫の視点で語られるらしいのだ。表紙画に目を止め、著者のプロフィールを走り読みしただけで購入し、いきなり読み始めたのだから、本書が子どもたちに向けて書かれたものであることなど知るよしもなかった。本書が梓河人氏と飯田譲治氏の共著、『アナン』の子ども向けバージョンだということを知ったのは、あとがきを読んでのことだ。漢字すべてにルビが振ってあることにも疑問を持たず、児童書とも思わず、語り口の甘さへの最初の違和感も忘れ、夢中に読み進んだのは、しっかりとしたテーマとプロットの妙があってのことだ。 |