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85枚の猫 1996年11月25日 発行 |
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猫写真の古典的名作と名高いイーラの猫写真集。原書は1952年に刊行されている。 見返しに現れるクロースアップに、まず度胆を抜かれる。ページを繰るごとに目に飛び込む猫たちは、いずれも強烈なインパクトで迫ってくる。そのインパクトの源泉は、距離だと思う。イーラ自身と猫の間の心的距離…それは、真摯に猫と相対峙し、相手に尊厳の眼差しを向けるときにはじめて生まれる距離のような気がする。感情に流されて相手にのめり込んでは、この距離を得ることができない。イーラは、猫に近付くときに、ハイトーンな声で語りかけたそうだ。実際にシャッターを押すときには、お膳立ても作意もあったことだろうが、出来上がった写真にその作意は感じられず、猫そのものの存在がオーラを放ちながらそこにある。 岩合光昭氏の『教科書』でもあったこの写真集は、眺めるたびに自分自身と猫との有り様が問われているような感じさえして、その答を探そうと再びページをめくる。 |