今回は、ブラジルの著名なアーティスト、エイブラハム・パラトニクの作品をご覧いただこう。
パラトニクは、ロシア系ユダヤ人で、1928年、家族が移民したブラジルのナタルで産まれた。ナタルは当時、農業を生活の基盤とする地域で、他に産業はなかった。パラトニクの一族は、この地に、家具・陶磁器の製造から砂糖の精製に至まで、さまざまな産業を導入した。パラトニクが、工業的デザインの作品を制作する芸術家として知られるのも、このような家族の活動に根付いているのだろう。
パラトニクは、キネクロマティック・アートのパイオニアでもある。キネクロマティック・アートとは、光のバルブとモーターで、スクリーンに描きだすアートである。
1970年代になると、パラトニクは、ルサイトという透明なアクリル樹脂を使った動物の像を盛んに作るようになる。鳥、フクロウ、ブタ、恐竜、リス、そして猫など、その種類はバラエティに富んでいる。
厚さ2cmほどの薄さだが、正面から見ると見事な立体感に驚かされる。
ともすると軽々しい印象を与えがちな素材でありながら、不思議なほどの存在感を醸し出すのも、パラトニクの技なのだろうか。
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