マイケル・ルーの猫

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初めてマイケル・ルーの作品に接したのは、9・11から間もない頃だったと思う。
車と人が路面を、カラフルな看板がビルの壁面を埋め尽くすタイムズ・スクエアに、ぬっと顔を出した巨大猫……その愛くるしい眼差しと、流れるような筆致に釘付けになった。『NY NY+Fuzzy II』と題された作品だ。衝動買いするには高価過ぎて、後ろ髪引かれながらその場を離れたのだが、この作品は深く記憶に刻まれた。

美術品というのは欲しいとは思っても、すべての歯車が噛み合った時にしか手に入れることができない。それを「期が熟す」というのかもしれないが、最初に出会って6年以上が経ち、ようやく2枚のセリグラフがマイケルのアトリエから届いた。

購入する候補作品の筆頭は『NY NY+Fuzzy II』だったのだが、いざ自宅に飾ることを想像すると、豊かで、穏やかに気持ちになれる作品の方が好ましく思われ、寝室用に『Summer Night by the Fountain』、居間用に『Happy Family V』を選んだ。



反射が写り込んでしまいました。お許しを。
『Summer Night by the Fountain』

2002年 56/135

筒に丁寧に収められた作品を開いたときの嬉しい驚きは、言葉にならないほどだった。幾重にも重ねられた色が複雑に絡み合って生み出される深さ、しっとりと落ち着いた色調のなかで、活き活きと描き出されてた猫たち、彼らの無垢さ……すべてが想像と期待をはるかに凌ぐものだった。

さて、額装をしなければ。マイケルに問い合わせると、8プライの白マットにシンプルな黒の額を、とのことだった。
既成の額はなく、オーダーすることに。
出来上った額は、112cm×88.5cm。絵自体が大きいことは判っていたが、こうして改めて見ると、寝室はおろか、自宅のどこにも飾れる壁がないことに気付いた。やむなく、事務所に飾ることに。この絵が掛けられるような家が欲しいなあ。



反射が写り込んでしまいました。お許しを。
『Happy Family V』

2003年 6/220

家族が集る居間を、温かく、明るくしてくれるだろう、というのはこの作品を選んだ2番目の理由。第一の理由は、三毛猫の母さんが今は亡きロッキーママに似ているからだった。足下の茶白はロッキー。ロッキーはこの絵と同じ4匹兄弟だった。この4匹はロッキーママよりはるか前に天国へ行ってしまった。今頃、こうして一緒に、木漏れ日を浴びながらママに甘えているのだろう。そうあって欲しい。

こちらの作品は、居間に飾るに相応しい大きさなのだが、Summer Night by the Fountain の隣に掛けてある。


セリグラフとは……

セリグラフは、通常のリトグラフと異なり、制作のすべてを画家自身が行います。
マイケルの場合、スクリーンに直接ブラシ・ストロークでイメージを描き、色数分のステンシルを作ります。ステンシルを通してインクを紙に映していくのですが、1枚映す度に、スクリーンはきれいに洗い流されます。
セリグラフは、マイケル自身のおびただしい時間と労力を掛けて仕上げられるのです。
出来合ったセリグラフの中から、マイケルの納得のいった作品のみがピックアップされ、署名とナンバーが入ります。
セリグラフは、極めてオリジナルに近いものとして、コレクターの間でも高い評価を受けるようになっています。


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